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伸銅海外情報 (2013年3月5日号)

目 次

○American Metal Market誌 2013年1・2月



American Metal Market誌 2013年1・2月

  アナリストの銅市場に対する期待が薄れ始めているなかで、2013年の銅市場に最大の影響を与える可能性のある要素として、中国の消費および世界各地の銅山操業開始の2つが市場関係者の注目を集めている。

英国を拠点とする取引業者は世界経済の見通しについて、「米国経済はいずれつまずく。重要なのは中国で、その消費スピードが注目される」とも述べている。

ロンドン金属取引所(以下「LME」)の銅価格は、中国の影響を大きく受け、2011年の年間平均価格である1トン8,810米ドル前後から、2012年12月には1トン7,960米ドルを少し上回る水準まで下落した。

トロントを拠点とするスコシア銀行のバイスプレジデントで、コモディティ市場の専門家であるPatricia Mohr氏によると、中国は銅の世界消費の4割超を占め、国際価格は上海の保管倉庫から生じる需要に大きく左右される可能性がある。国際銅研究グループの見込みでは、2012年の銅の世界消費量は対前年比2.6%増、中国の消費量を除くと1%減となっている。

「莫大な量の精錬銅用向け在庫が中国に積み上がっている。(2012年に)上海先物取引所の在庫は増加したにもかかわらず、LMEの在庫は全体として減少したのが実際である」と、Mohr氏は述べている。

また、銅生産業者に悪いことに、中国の銅消費量は減少すると思われる。前述の英国を拠点とする取引業者によると、中国の銅加工業者はマーケットシェアの問題や需要の落ち込みに直面しており、在庫削減に取り組んでいる状況である。スコシア銀行によると、2012年の中国消費量の成長率は2006年以降で最低であった。同行の予想では、2012年の中国消費量の成長率は対前年比約2ポイント低下の6.3%増で、2013年および2014年の成長率は7.5%〜8.5%の範囲で推移する可能性が高い。

さらには、中国では在庫が報告されないことが多く、このことが潜在的な市場攪乱要因となっている。すなわち、中国に大量の「隠れ」在庫があることが、需要を抑制し、供給量を世界的に増加させる主因となっている。パリを拠点とするBNPパリバの推定では、中国には報告されていない銅の在庫が過去4年間で200万トンもあり、アナリストは少なくとも50万トンが上海の私設保税倉庫に保管されているとしている。

「在庫がどの程度厳重に保管されているか、そしてその在庫がLMEに輸出されるかどうかが重要である」と、前述の英国取引業者は述べている。

そのうえ、中国の需要が弱まるにしたがい、長期的に供給がだぶつき、2013年末までに銅市場に下降圧力がかかる可能性がある。多くのアナリストが、労働争議、鉱石品位の低下、地政学的な政情不安など生産業者が近年対峙してきた問題がいまだ解決されていないにもかかわらず、銅の世界生産量は急増すると述べている。ニューヨークを拠点とするINTL FCStoneの予想では、銅の供給不足量は2012年の30万トンから2013年には10万トンに減少し、生産量は2012年の対前年比2.52%増から2013年には3.92%増となると見込んでいる。BNPパリバは、2012年には30万トンの供給不足であったのが、2013年には10万トンの供給過剰に転じると予測している。前述の英国取引業者は2013年に9万トンの供給過剰が生じると見込んでいる。

BNPパリバの推定では、世界各地の銅山は増産基調にあり、インドネシアのグラスベルグ銅山およびチリのエスコンディーダ銅山の生産量は大幅な増産により、2014年までに合計50万トンに達する可能性が高い。スイスのツーグを拠点とするエクストラータが新たに開発したペルーのAntapaccay銅山は2012年11月に操業を開始し、2013年は14万トンの生産量を予定している。アングロ・アメリカンの発表によると、チリのロスブロンセス銅山の生産量は2012年第3四半期に84%増加し、2013年の年間生産量は40万トンに達する予定である。

Mohr氏によると、既存銅山の増産分と新規操業分を合計すると、銅の世界生産量は7.5%増となる。

しかし、アナリストは政治的混乱および鉱石品位の低下が銅の生産に及ぼす影響について警戒を緩めていない。「(生産量の)下振れリスクが少なからず存在する。コンゴ民主共和国(DRC)では、一部の銅山の操業開始時期が当初の予定より遅れる可能性がある」と、Mohr氏は述べている。

BNPパリバの報告では、カタンガ・マイニングが運営するDRCのKOV銅山の銅生産量は2013年に20万トンに達する予定だが、DRC一帯で拡大する内戦の影響で未達となる可能性がある。中国の2012年10月の銅輸入量は、チリで発生したストライキが原因で対前月比約20%減となった。ブリティシュコロンビア州のバンクーバーを拠点とするファースト・カンタム・ミネラルズが運営するザンビアの銅山では、労働者によるストライキが発生した。ペルーでは2012年に、スイスのツーグを拠点とするエクストラータが手掛けるティンタヤ銅山開発計画およびコロラド州のグリーンウッド・ビレッジを拠点とするニューモント・マイニングが手掛けるコンガ銅山開発計画で、深刻な労働不安が発生した。

バークレイズのコモディティ調査担当役員であるGayle Berry氏は次のように述べている。「今後10年間、銅のさらに多くが情勢の不安定化が進む地域からの供給で占められるようになる。銅の現実的な生産水準を考える上で、あまり真剣に検討されない要素がいくつかあるが、これはその1つである」。

また、ある製造業者は次のように述べている。「銅の生産は一段と困難になっている。現在の銅の供給量では需要の増加を満たすことができないため、経済活動が全世界で活発になれば、銅価格は現在よりも大幅に上昇するであろう」。
ロンドンを拠点とするニューエッジ・グループの金属部門上席役員、Michael Turek氏によれば、生産が困難になり鉱石品位が低下しているため、将来的に銅が不足する可能性がある。同氏は、「銅の長期にわたる供給状況が、価格の下支え要因になるであろう」と述べている。

しかしながら、銅製造業者が供給困難な状況を克服し、長期的には市場が銅であふれるようになるとアナリストの多くが述べており、2013年以降供給量はさらに増加すると予想されている。また、多くのアナリストは、世界市場の需給が逼迫しているため、銅価格は1トン8千米ドルを下回る水準で推移すると予想している。BNPパリバは2013年の最高値を1トン8,500米ドル、年間平均価格を7,825米ドル前後と予想しているが、Mohr氏は年間平均価格を7,890米ドルと見ている。INTL FCStoneの予想価格レンジは7,200米ドルから8,900米ドルで、年間平均価格は8,000米ドルである。

とはいえ、中国における供給増加および需要鈍化の影響が市場に徐々に浸透してきているとアナリストが見ているように、銅の値上がりの勢いは弱まるかもしれない。「銅山の安定操業をどれだけ信じられるかで、市場に対する見方は変わってくる」と、前述の英国取引業者は語っている。
Samuel Frizell

「莫大な量の精錬銅用向け在庫が中国に積み上がっている」
−スコシア銀行のPatricia Mohr氏





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