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伸銅海外情報 (2010年9月22日号)

目 次

鉱山会社はオーストラリア政府による資源税譲歩を歓迎(MW誌)

CRUニュース(CRU)

Carmenが韓国に輸出 (MW誌)

米国のスクラップ市場C 「内需の回復」(MB誌)

ダブル・パンチ:人民元切り上げで [中国の] 輸出業者の負担が増大
中国はベースメタル製品についても輸出増値税還付制度を撤廃
(MB誌)




鉱山会社はオーストラリア政府による資源税譲歩を歓迎
(MW誌)

 メルボルン発‐かねてより論争の的となっていた税率40%の資源超過利潤税(RSPT) [導入法案] について、ジュリア・ギラード新豪首相は7月2日に大幅な譲歩を発表し、同国の3大鉱山会社のBHPビリトン、リオ・ティント、およびエクストラータは、直ちに歓迎の意を表明した。

RSPT [法案] は、鉱物資源利用税(MRRT)法案に差し替えられる。新法案では税率が30%に引き下げられる上、対象は鉄鉱石と石炭のプロジェクトに限定され、その他すべての [資源] 商品と利益が年5,000万豪ドル(4,200万米ドル)未満の [鉱山] 会社は除外される。

その結果、課税対象となるのは約320社にすぎず(これに対して、仮に [当初案通り] RSPTが導入された場合には2,500社近くが課税対象になったはずである)、残りの企業には既存の課税制度が引き続き適用される。

BHPビリトン、リオ・ティント、エクストラータは、[新] 法案への差し替えにより、遡及適用されないこと、および投資先としてオーストラリアが不利にならないことという、[鉱] 業界の税制改革「基本方針」に沿った鉱物資源税制の設立に向けて「かなり大きく進展した」とコメントした。

アナリストは、3社の [鉱山] 資産は円熟期に入って低コスト・高利益体質に仕上がっているため、設備投資はほとんど必要なく、その分を利潤税の相殺に充当できるとして、仮に [当初案通り] RSPTが2012年中盤に導入されても、3社ともその後2年間はRSPT課税額120億豪ドル(100億米ドル)を大方賄える公算が大きいとみていた。

オーストラリアの鉱物資源企業団体Minerals Council of Australiaも7月2日に修正 [案] 賛成の意向を示し、最新の [MRRT] 法案こそ「真の利用税」と持ち上げた。

一方エクストラータ・カッパーは、税率40%のRSPT法案を受けて6月3日付で停止していた投資額5.89億豪ドル(4.94億米ドル)のErnest Henry鉱山坑内掘り計画と3,000万豪ドルのクイーンズランド州北部地域探査計画について、前者は全面的に再開し、後者も元来の計画通りに進める旨を直ちに発表した。

BHPビリトンのCEOを務めるMarius Kloppers氏は、「MRRT制定前に、やるべきことがまだ沢山ある。積極的に政府に協力して、将来に向けたオーストラリア資源産業の国際競争力維持と、業界と全オーストラリア国民双方の長期的利益を両立できるような鉱物資源税の詳しい制度設計を詰めていく意向である。」という声明を出した。

ウェイン・スワン豪財務相は、記者会見で、複雑な制度であるため、MRRT制定法案を年内に国会に提出できる可能性は低いという見解を示した。新税が発効するのは、オーストラリアの新年度がスタートする2012年7月1日になるとみられる。

他方、野党自由党党首のトニー・アボット氏は、2011年4月までに実施されるのは必至の次回の選挙で自由党が勝利すれば、MRRTを廃止すると明言した。

BHPビリトン、リオ・ティントに次ぐオーストラリア第3位の鉄鉱石鉱山会社で、西オーストラリア州ピルバラ地方に所在するFortescue Metals Groupは、 [政府側の大幅譲歩という] 結論が、国内企業の意見をとり入れずに、政府と3大多国籍鉱山会社だけの間で話し合われた結果ではあったものの、合意内容は「現行の業界内の協議の合理的な枠組み」になる、という見方を示した。
同社のCEOを務めるAndrew Forrest氏は、声明で次の点にも言及した。「ただし、中小の国内鉄鉱石・石炭鉱山会社がようやく業界内で足場を広げた正にその時に、このような新税法案が持ち出され、たちまち出鼻を挫かれたことは、非常に残念だ。

新 [税] 法案は適用範囲が狭い上、複雑なため、業界への新規参入を阻むことになろう。今後は、新税法案移行措置について政府が明確にするよう働きかけていく。」

西オーストラリア州中西部の新興鉄鉱石産地からピルバラ南部にかけた地域で事業を営む小規模鉱山会社の団体であるGeraldton Iron Ore Allianceは、Fortescueと同様の反応を示し、「より広い範囲の鉱山会社に相談せずに合意したものであるにせよ、正しい方向への前進である。」と新税法案を評価した。

政府と3大鉱山会社間の合意文書の冒頭に記されている修正案では、取替利益に基づく税率30%のMRRT(山元ベースで算出)の課税対象は、鉄鉱石産業と石炭産業に限られる。利益だけに課税されるよう、採掘作業には25%の控除が認められるが、法人税は引き続き支払うことになる。また、政府が新規プロジェクトのリスクの40%を肩代わりするというRSPTの“要の方針”は、撤回された。

キャンベラで行われた記者会見で、ギラード首相は「交渉を経た上で利益に基づく課税制度が導入されるだろうが、RSPTが導入されることはない。」と断言して、修正された新税法案を発表し、さらに「[鉱] 業界が政府に反対を申立てた還付可能性は取り下げた。」と報告した。

修正の結果、税収はRSPTを導入した場合の見通しよりも15億豪ドル少なくなる計算だが、ギラード首相は、それでも政府側は依然として2013年の財政黒字化を目指している、と述べた。

さらに、新税制では、法人税率は現行の30%から29%に引き下げられるが、一連のRSPT法案の一環としてセットにされていた減税案の28%よりは高くなる、と付け加えた。

オーストラリア鉱業界は、事前の相談もなしに、州 [政府] による生産賦課金(ロイヤルティ)を主に基準としてきた制度から、5月2日に発表された一律40%のRSPT課税案に変更することに、大反対してきた。多数のプロジェクトが棚上げされた、あるいは見直しされただけでなく、より大きな被害を受けたのは、海外からの投資の誘致を試みても不確実性が嫌気された点であった。

[RSPT導入を巡る] 論争が激化する中、当時与党であった労働党を率いていたケビン・ラッド前首相に代わってギラード氏が新首相に就任してからわずか8日後に、RSPT [導入] が撤回された。

7月2日に発表された修正 [案] は、「鉄鉱石、石炭、石油、天然ガスといったオーストラリア最大で利益も最も大きい [資源] 商品に課税する資源税制の改革に重点を置いたものである。これらの[資源] 商品で、オーストラリアの輸出額および資源事業利益の3/4を占めており、鉱業界の資源利用料に占める割合はさらに大きい。またこれらの [資源] 商品は、今後数十年間にわたる鉱業界の成長をほぼ代表する商品とも言えよう。」という政府声明が出された。

 (MW誌 2010年7月5日)



CRUニュース (CRU) 

フランスの [銅] ケーブル・メーカーNexansのランス工場(フランス北部に所在)のマネジャーによれば、同社が [銅] ケーブル生産に用いる再生銅は、2009年が9,000トンであったのに対して今年は2.5万トンに増加し、再生銅使用品が [銅ケーブル] 生産全体に占める割合は16%にのぼる見込みである。ランス工場では、電線としての使用に十分な純度まで再生銅を精製できる。過日Nexansは、Sita Franceグループと共同でランス近隣に [銅] ケーブル・リサイクル工場を開設した。そのリサイクル能力は年3.5万トンで、2011年までに5万トンに拡大する見通しである。

(CRUニュース  2010年7月2日)




英国エネルギー・気候変動省は、海上風力発電の研究開発に1,000万ポンドの助成金を交付すると発表した。英国の [風力発電] サプライチェーンに属する企業を支援するもので、これに含まれるJDR Cable Systems Ltd.も、数メガワットの次世代タービンからの配電用高圧送電/アレイ・ケーブルの開発を目的に、200万ポンドの助成金を受ける。Siemens Windpowerが、6メガワットの次世代海上タービン開発のため、500万ポンドの助成金を受け取ることも確認された。

(CRUニュース  2010年7月9日)



Carmenが韓国に輸出
 (MW誌)

フィリピン上場企業Atlas Consolidated Mining and Developmentの子会社であるCarmen Copperは、通常、中国に銅精鉱を輸出しているが、先週初めて韓国に輸出した。

これはCarmenがセブ島トレド市にある自社鉱山から行う今年9回目の輸出にあたり、中国以外の国への初の輸出である。

Atlasは、フィリピン証券取引所に提出したプレス・リリースの中で、今回輸出したのは銅精鉱5,241.647dmtで、銅含有率は28.35%、dmt当たりの金含有量は2.97グラム、銀含有量は23.29グラム、総輸出額は推定1,011万ドルと報告した。

Carmenの次回の輸出は7月第1週に完了する見込みで、会社側は5,000dmtの銅精鉱在庫を既に準備している。同社によれば、7月22日にはさらに次の船荷が輸出される見通しである。


(MW誌 2010年7月5日)




ダブル・パンチ:人民元切り上げで [中国の] 輸出業者の負担が増大
中国はベースメタル製品についても輸出増値税還付制度を撤廃
 (MB誌)

上海およびロンドン発‐中国は、一部の銅製品、鉛製品、ニッケル製品、および錫製品について、5%の還付率を認めていた輸出増値税還付制度を7月中旬より撤廃する。

中国財政部は、需要減に苦しんでいた輸出業者の支援を目的に昨年導入された [輸出増値税] 還付制度を、7月15日をもって撤廃する、と発表した。

対象製品は、棒材、プロファイル材、線材などの銅、鉛、または亜鉛の半製品または加工品の一部とされている。

還付制度撤廃は貿易摩擦を回避するためで、主要なエネルギー集約型産業を整備しようという中国政府の思惑に沿ったものである。Donghua Futuresのチーフ・エコノミストのTao Jinfeng氏は、「米国やロシアとの間だけでなく、ブラジル間でさえも、貿易摩擦が生じていると時折耳にする。」として、次のような見方を示した。

「G20サミット開催が控えているため、中国政府は貿易相手国をなだめる方策を何か実行する必要に迫られている。」

ベースメタル以外の数百品目の製品でも既に還付制度が撤廃されていることは、自国経済を輸出依存型から脱却させようとする中国政府の試みを反映したものである。

だが、人民元改革と一段の人民元切り上げの見通しに直面している輸出業者にとっては、ダブル・パンチである。


(MB誌 2010年6月28日)






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