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日本伸銅協会では、伸銅業の経営実態を財務係数により的確に把握するため、各年一度協会会員各社から所定の調査様式による、 貸借対照表・損益計算書・その他財務諸表等の提供を受け、伸銅工業の経営分析を実施している。
今回の伸銅工業の経営分析にあたり、平成24年度の決算を終了した23社の財務諸表を採
録したが、このうち伸銅以外の事業を兼営し、 そのウエイトが大きい会社を除いた別記の17社
を対象に分析した。 本分析の対象とした17社の平成24年度(平成24年4月〜平成25年3月)
における伸銅品生産量は、同期間の全国生産量の34.4%に相当する。
尚、 他業種兼営の6社については、 別途の集計を行ない、 主要経営指標のみを参考資料
とし付した。
今回の分析にあたっては、 平成24年度の決算を終了した各社の財務分析を採録しているので平成24年8月決算の会社と平成25年3月決算の会社とでは、その決算内容に7ケ月のズレが
生じることになる。 そこで、 このズレをいくらかでも緩和する試みとして、採録17社について前
半(平成24年4月〜平成24年9月)に決算を終了した4社と、 後半(平成24年10月〜平成25年
3月)の決算を終了した13社を別々に集計し、それぞれの貸借対照表・損益計算書・利益処分を
作成すると共に、 経営諸指標についても分離して算出した。こうした分析の手法については、従
来の分析手順を踏襲した。
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1)全般動向
平成24年度の日本経済は、上期は2期続けて実質GDPが前期比マイナスするなど低迷した
が、10−12月期には前期比+0%となり、景気の後退局面はようやく終了を見せ始めた。
その後、平成25年に入ると、新政権による経済政策や日銀の大胆な金融緩和に対する期待
などを受け、為替の円安傾向への転換、株価の改善などの回復意識が盛り上がり、景気は
上昇機運が高まった。
平成24年度に景気が後退した要因については、輸出の悪化、設備投資の先送り、秋口から
の自動車輸出の減少の影響と言われており、通信・サービスなど第三次産業を除く製造業に
強くその傾向が現れた。
一方、震災後の被災地復興を支えてきた公共投資は、ここにきて一服感を示しており、今後は
政府の緊急経済対策が待たれるところである。
こうした中、平成24年度の伸銅品需要は、年度前半は前年後半の欧州通貨不安から波及
した中国経済の減速、円高の継続、半導体需要の低迷等より回復が遅れ、また24年初に
一旦底打ちしたと見られた需要も、夏場を境に半導体需要の再度の減退、年後半の中国向け
自動車輸出の大幅減により板条品種が大きく減少した。
板条製品は、平成23年秋口からの半導体・電子機器分野全般の減速から十分にに回復しないまま、夏場以降はPCの不振とタブレット化の進行などで欧州・中国での需要低迷が続いた。
また秋以降の日中関係悪化による自動車販売の減少は、端子・コネクタ分野での板条製品の
年後半からの減少をもたらした。
一方銅管は、3年連続の夏場の猛暑と電力制約の懸念から、省エネタイプの国産エアコンが
選好され、順調に伸びたことから銅管需要は堅調さを見せた。しかしながら、国内銅管メーカー
1社が国内生産から事業撤退したことにより、国内生産量は頭打ちで推移し、前年度比較では
下回ることとなった。
黄銅棒は、東日本大震災後の在庫調整を経て上期には一定の回復を見せたものの、自動車
向けを除く各分野での回復は弱く、下期も力強さに欠ける動きで推移した。
以上の結果、平成24年度の伸銅品生産は、759,051トン、前年度比△5.8%の大きな減少
となった。
2)電気銅地金の動向
伸銅品の主原料である電気銅の国内価格は次の通りとなっている。 平成17年度より大きく
上昇を続けた電気銅の価格は、平成20年9月までは80万以上の水準にて推移していたが、
リーマンショック発生以降急落し、平成20年12月には31万円まで下落した。その後はしばらく
市況は落ち着いてはいたが、原油市場の動きや需給動向の回復もあり、再び価格は上昇傾向
を辿り、平成23年3月には83万円にまで達している。しかしながら、平成23年夏場に入り欧州
の金融不安とともに急落し、10月には60万円まで下落したが、その後は徐々に上昇を続け
平成24年3月には74万円に達した。平成24年は欧州債務懸念再燃等により8月には63万円
にまで下落したが、その後は米国・中国の景気回復期待から上昇に転じている。
なお、23年度及び24年度の単純平均は、718千円、696千円となっている。(△3,1%)
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17社の平成24年度における伸銅品売上数量は274,276トンで、前年度に比べ△3.8%の
減少となった。売上高も、259,749百万円と前年度比△11.2%の減少となった。売上高の減少率
が高いのは、比較的銅価の低かった上期の売上数量が多かった為等と思われる。
以下に対象17社の売上高と売上数量推移を示す。
一方、平成24年度における収益状況においては、経常利益についてみると、17社の内11社
が利益を計上、残りの6社は経常損失を計上し、全社の経常利益は前年度の4,343百万円
から4,702百万円と+8.3%の増加となった。
また、当期利益については、利益を計上した会社は12社、損失を計上した会社は5社となり、
全体の当期利益は、前年度の3,415百万円から△829百万円と当期損失となったが、これは
大口の特別損失が発生したことによるものである。
尚、平成24年度に配当を実施した会社は8社で、前年度より1社増加した。
以下に売上高経常利益率と売上高当期利益率を示す。売上高経常利益率は、前年度の
1.49%から1.81%に0.32ポイントプラス、売上高当期利益率は1.17%から△0.32%に
1.49ポイントマイナスとなった。前年度に比べ販売数量、売上高は減少に転じたが、売上
原価率が低下した事が経常利益率の良化に繋がった。
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平成24年度末の有形固定資産は82,766百万円で、前年度末に比べて△5.6%の減少と
なっている。また無形固定資産は前年度末比△13.8%減の755百万円、投資等は△14.0%
減の10,905百万円で、固定資産合計では、前年度比△6.8%減の94,426百万円となって
いる。
一方、平成24年度の減価償却実施額は、9,658百万円と前年度比△7.1%の減少となった。
有形固定資産が減少しているのは、減価償却以外では、幾つかの会員会社において設備の
廃却が実施されたこと等によるものである。
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平成24年度の資金需要は、12,192百万円減少した。売上債権が7,943百万円の減少、
固定資産も6,837百万円減少した。一方棚卸資産は2,809百万円増加した。
一方、資金調達面でも12,192百万円減少した。減価償却費が9,658百万円増加し、
買入債務も800百万円増加したが、短期借入金が9,193百万円減少、内部留保も2,682
百万円減少し、その他で12,192百万円減少した。
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資産、資本に関する主要比率を前年と比べると、自己資本比率は33.9%(前年度33.2%)
固定比率は134.0%(同138.3%),固定資産対長期資本比率は70.7%(同73.9%)、
流動比率は151.3%(同141.2%)となっている。平成24年度は、資産が圧縮された事もあり
各指標とも良化を示している。
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