日本伸銅協会 JCBA Japan Copper and Brass Association
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三和テッキ株式会社
日本伸銅協会 広報委員会
(伸銅季報 No.1号:通巻54-4掲載)
はじめに
本社全景  
 平成15年(2003年)10月1日、品川駅が東海道新幹線の第17番目の駅として開業し、東海道新幹線は、東京オリンピックが開催された昭和39年(1969年)にスタートしたが、今回の品川駅開業に併せて、「こだま」「ひかり」からより高速化した「のぞみ」に主役が移ろうとしている。超高速の実現には車体の形状や強度アップ、軽量化等が上げられるが、目立たないところで伸銅品が寄与していた。電車に電気を供給する架線と架線金具である。 今回の訪問先、三和テッキ株式会社は、品川の隣駅、大井町にあり、架線金具や架線の支持物、更には送電用機器類を製造している。同社の創業をたどると、なんと明治40年(1907年)にまで遡ることになる。日本に、本格的な電気鉄道が京都の市電として導入されたのは明治27年。それから遅れること、わずか13年後のことである。今年で、創業96年を迎える同社の歴史は、そのまま日本の電気鉄道発展の歴史と重なっていた。
 同社は、電車の架線金具の国産化に初めて成功した会社である。そして今も、世界最高のスピードと安全性を誇る、日本の鉄道システムを支え続けている、電車線金具のトップメーカーである。
 JR京浜東北線と東急大井町線が交差する大井町駅は、昔からのターミナルとして知られている。ただ近年は、臨海副都心線の開通でアクセスが便利になり、マンションの新築が相次ぎ、また駅周辺には飲食店の新規オープンが相次ぎ、新しさと古さが混在した町並みとなっている。そんな駅前の喧騒を抜け、ゼームス坂を下って路地を一本奥に入ってみると、雰囲気が一変する。この坂下には、いくつかの企業の工場が並ぶ一帯があり、 表通りの騒がしさがうそのような、静かな空間が広がっている。この一帯の中心に、曲線と直線が調和した、シルバーに輝くモダンなビルがある。ここが三和テッキ鰍フ本社ビルである。  
 取材でお伺いした日は、志賀製造本部長にお目にかかることが出来、会社の概要や電車発展の歴史を丁寧に説明頂いた。その後、隣接する本社工場(東京工場)にもご案内頂いた。派手さは無いが、地道に世界に通用する 技術を一世紀の長きに亘り築いて来た、日本の製造業の誇りと同社の実直な社是とを重ね合わせてみた。(写真:志賀製造本部長)
会社概要
会 社 名 三和テッキ株式会社
英 文 社 名 SANWA TEKKI CORPORATION
本社所在地 〒140−8669
東京都 品川区南品川6丁目5番19号
(電話 03-3474-4111)
創   業 1907年(明治40年)9月
資 本 金 4億2,380万円
代 表 者 取締役会長  手塚  一義
取締役社長  渡辺  秀雄
従 業 員 数 460名
工   場 東京・宇都宮・甲府・熊本
ホ-ムペ-ジ http://www.tekki.co.jp

沿 革
1907年(明治40年) 9月 電気鉄道用架線金具の製造販売を行う馬来製作所設立
1927年(昭和 2年) 2月 馬来工業株式会社を設立
1945年(昭和20年)10月 社名を三和鉄軌工業株式会社に改める
1956年(昭和31年)10月 管系支持装置の製造販売を開始
1968年(昭和43年) 9月 宇都宮工場操業開始
1973年(昭和48年) 6月 社名を三和テッキ株式会社に改める
   〃         10月 熊本工場(現九州三和鉄軌株式会社)操業開始
1975年(昭和50年) 3月 甲府工場操業開始
1995年(平成 7年)10月 磁石ベルト式搬送装置の製造販売開始
1996年(平成 8年)10月 上海三和鉄軌有限公司を設立
1997年(平成 9年) 1月 ISO9001認証を取得
1998年(平成10年) 7月 建築構造物用耐振油圧ダンパーの製造販売を開始
2002年(平成14年) 7月 生分解苗ポットの製造販売開始

事業内容
 鉄道向け金具や通電機器・機械工具類の製造と販売が50〜60%を占めているが、近年はその技術を応用した電力向け金具・工具・機械等の製品やプラント市場にも拡げている。

1.鉄道市場関連:電車線路用金具、変電所用金具、同工事・保守用機械工具等
2.電力市場関連:送・配電線および発・変電所用金具、工事用機械工具、その他安全・省力化対策用各種工具ならびに装置等
3.プラント市場関連:原子力発電所・火力発電所・化学プラント用管系支持装置
および安全装置、メンテナンス業務等
4.新規市場関連:建築用制振装置、同免震装置等

グル−プ会社
千代田器材株式会社: 東京都品川区南品川  (TEL 03-3474-1511)
九州三和鉄軌株式会社:熊本県山鹿市大字古閑字(TEL 0968-44-4411)
株式会社三和:     東京都品川区南品川  (TEL 03-3473-5176)
株式会社三和クリーン:東京都荒川区西日暮里 (TEL 03-3805-2271))

経営理念と社是
≪経営理念≫
社員が『誇り』を持ち続けることの出来る企業を実現する。
  社員の『誇り』とは、
   ・お客に満足頂ける製品とサービスを提供すること
   ・企業の社会的責任を追求し、人類社会に貢献すること
   ・社員の自己実現を可能にすること
≪社 是≫
「誠を貫く」
 この社是を正しく理解し、ものを考えるとき、仕事をするとき、人と接するときの基本としたい。誠は、真事・真言(まこと)である。
   一.うそ偽りがないこと。真実の通りであること。本当。
   二.偽り飾らない情。まごころ。誠意。
などの意味である。日本人は、奈良時代の昔から『明き、浄き、直き、誠の心』をもって働くことが最も良いことだとされていた。
 わが社では、みんなが誠の心をもって働き、お互がよくなるようにすると共に会社そのものを「誠を貫く」結集体にするよう努力する。
 社是をご披露頂く時に,「失敗しても言わないこと、嘘を言うことは貧しいことである」との表現で、歴代の社長から繰り返し薫陶を受けた、と説明受けた。その言葉がそのまま社是として、引き継がれているようである。

電車の架線金具
鋼管ビ−ムを使用した架線
 架線金具とは,電柱と電線を支える各種の金具類のことである。電車のスピーディな走りを助長する電車線設備。これは空中に一定の高さに、一定の張力で、電車線を張り、トロリ線から電車のパンタグラフに電気を供給する重要な設備となっている。一見すると10数メートル間隔でたわみがある電線も、電車が通過する際に、パンタグラフと接触していないと集電不良を起こすことになる。この両者を柔軟に繋ぎ止めているのが,架線金具類なのである。
 一般に電車線設備には、超高速用・高速用、また直流・交流など多種多様な架線構造があり、その為に、トロリ線を張る金具とか、電線の伸縮を調整する装置,電気を送る金具などが必要となる。添付の模式図をご参照願いたいが,架線をつなぐ金具として,曲線引金具・コネクタ金具・ハンガイヤー,引留金具・等があり、架線の支持物として、可動ブランケット・滑車式バランサー・バネバランサー・電柱バンド等がある。
 路線によって金具の形状が異なるので、同社製品は多品種・小ロットとなっている。 


伸銅品使用部品
 リン青銅の6mm丸棒が"ハンガイヤー"、特に新幹線用に多く使用されている。また、純銅の丸棒(鍛造品)が“コネクタ金具”や“フィードイヤー”に使用されている。その外、アームスブロンズ(アルミニウム青銅)も使われている。

同社創業のいきさつ
 明治28年(1894年)京都に市電(路面電車)が開通した。日本の電気鉄道の夜明けである。ただ、その当時使われていた電車体・レール・架線等の殆どが海外からの輸入品だった、と言われている。架線金具も同様で、全てが輸入品で賄われていた。時の明治政府は、将来の電車の時代を見越し、国家の政策として必要な部品の国産化を奨励した。これに応えたのが、現在の三和テッキ鰍フ創業者 馬来 晃(まき あきら)である。架線金具の国産化に成功した馬来 晃は,明治40年(1907年)に、同社前身の馬来製作所を設立する事になる。
 その後、日本は第一次世界大戦・第二次世界大戦を経験するが、現在の同社発展は、昭和39年(1964年)に開業した、東海道新幹線の架線金具に参入したことである。JR(旧国鉄)との共同開発事業では、架線の大枠プランはJRが行い、架線金具の基礎技術は同社が担当することになった。まさに一対一の開発事業であったとのことである。この間に示された同社の技術力が、その後の発展の原動力となっている。

今後の取り組み
 超高速化を実現する先端技術への対応と共に、電車線設備全体の施工やメンテナンスの省力化・安全化も重要な課題となっている。そうした観点から開発されたのが、鋼管ビ−ムを使用した架線構造である。これは、従来の方式に比べると、部品点数がおよそ半分でシステムが構成されており、インテグレーテッド架線と呼べるものである。設備の集約化により、工事期間・メンテナンス期間の短縮につながっている。。
 また、鉄道の新路線の敷設や既存路線の改善は、架線だけが変わるわけではなく絶えず電車・電気システム・レール・土木・そして架線が一体となったプロジェクトで行われる。それゆえ、架線構造の変化には、架線金具の形状や性能の高度化が求められる事になる。
 また、その時々の技術ニーズに追いつけるような技術開発力を蓄積するのが製造業です。我々には改善のニーズはまだまだあるのです。と志賀製造本部長はおっしゃられた。そこには創業開始以来の、常に日本の架線金具業界をリードして来たという自負のようなものが覗えた。 

品質管理とフィ−ルドオ−トメ−ション
 三和テッキ鰍ヘ、昭和8年以来この地を本拠にしているが、順次、宇都宮、甲府、熊本などに工場を新設。鉄道市場で培った技術を基に、電力市場、プラント市場などに進出し、事業の多角化を図ってきた。
 同社の製品は、消費財関係ではないため、一般に余り目につくことはないが、いずれも、鉄道、電力、プラントなどの基幹産業を支える枢要な役割を果たしている。同社は,こうした一連の事業を“フィールドオートメーション”と名づけ、取組んでいる。電気鉄道や電力などを、ひとつの"野外システム"と捉え、機械化・省力・省人・メンテナンスフリ−をひとつのシステムとして、製品やソフトを提供出来るような体制作りである。

おわりに
 同社の訪問を終え、再び京浜東北線の大井町駅のホームに降り立ったとき、ふと見上げると、数メートルの間隔で架線には支持物や金具がついているのを見つけた。普段あまり目につくことはないが、電車を走らせるために欠かすことが出来ない製品であることを認識した新しい発見である。最新の鋼管ビ−ムは見当たらなかったが、あの金具の大半が三和テッキ鰍ナ製造され、その架線一つ一つが、現在の日本全国の鉄道網を支えているのだ、と思うと、明治の後期に、電車の架線金具の国産化を指向した創業者のロマンと、同社がその意志を長く受け継ぎ、日本の鉄道事業の発展に寄与して来たことに、思いいたらずにはいられなかった。
 皆さんも、プラットホームに降り立った時は、少しの間だけ電車の架線を見上げてください。明治時代から現代への時の流れの一端を感じることが出来ます。見上げてみよう夜の星を、ならぬ、見上げてみよう電車架線を。

                    [紹介会社:株式会社藤井製作所
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