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IWCC上海総会に出席して


 9月9日(木)に上海で世界銅加工業者協議会(IWCC)の理事会と総会が開催され、これに出席してきました。理事会には松本JWCC会長(住友電工社長)と私が出席しましたが、理事会では、@新入会者の会費、Aテクニカルセミナー参加資格、B2010年決算見通し、2011年予算案、C2011年の総会開催時期等について議論がなされました。特に、Cの総会開催時期については、これまでの9月開催ではなく、毎年5月に開催される合同会議(Joint Meeting)と併せて開催されることになりました。
  続いて総会が開催されましたが、従来、総会への参加者は50〜60人程度のところ、今回は世界で最も元気な都市、上海ということもり、参加者は例年を上回り、11カ国から約90名(うち日本20名、韓国約15名)が参加しました。
 総会では、理事会の合意内容を承認したほか、Otten会長の後任として、Poongsang Corporation(韓国)のJin Roy Ryu会長兼CEOがIWCCの新会長に選任されました。

 午後からの総会第二部では、中国に特定したセミナーが開催されました。 「中国銅産業の優位性を活かした第一級の銅加工業を構築するには」と題した講演では、Chinalcoの副会長が、「Chinalcoはアルミ企業であるが、銅事業にも重点的に取り組んでおり、傘下のChina Copper Limitedは、鉱山、製錬、銅加工部門を所有して一貫生産を進めている。今後5年間で60万トンの板条製品を生産する予定。今後とも研究開発に注力して伸銅品のトップ企業を目指す。特に、板条製品に投資する他、リードフレーム、無酸素銅管、環境に優しい黄銅棒の開発に努める」旨をコメントしました。

 「中国のエナメル銅線産業の発展」と題した講演では、Honglei社のチーフエンジニアが、「Hongleiは1998年設立の国営企業。銅管、エナメル線を生産。ハイテク企業として認知されており、中国トップ500に入っている。2012年の同社の生産計画は、エナメル銅線10万トン、銅管15万トンの予定。1980年までは、製品の質はあまり良くなかったが、その後、230以上のラインを日本・台湾から導入して発展を遂げ、2001年〜2010年の間に中国は世界最大のエナメル銅線の生産国になった。世界の研究・開発の中心的存在になるためには、更に新しい設備を必要としている」旨を講演。

「エアコン産業の脅威と事業機会」と題した講演では、Hailiang(海亮)社の生産管理副部長が、ACRを取り巻く脅威として、以下の3点を指摘。
@ 原料供給(銅価高く、変動が激しい)
A オーバーキャパシティ
B 川下のエアコンメーカーが代替物を示唆

 @の原料価格については、「銅価の推移は2005年までは安定していたが、その後の急 激な乱高下が色々な問題を突きつけた。銅価の日内変動が$800/tではリスク管理が難しい。2012年には1万ドルを予測する声もある。」旨を、Aのオーバーキャパシティについては、「銅管生産量は年間90万トン。2006年以降中国ではキャッシュフローが倍以上になり、同業者の多くが消えた。2005年以降市場価格は下落してマージンが低下。3つの工場に加えて、銅陵市にも工場を作っているが、その理由はサバイバルのため。オーバーキャパ下での市場縮小は苦しい。原料コスト低減のため肉厚を薄くしてきている。」旨を、Bの代替物については、「市場では代替化が進行中。配管分野ではPetパイプがメインになり、電子分野にもアルミケーブルが入っている。現在程の価格差が出ると、エアコンメーカーが代替化に走る動きを止めることは出来ない。銅価が高い以上、要求性能は得られないとしても、アルミ管を使おうということになる。消費者は高いエアコンを買わないので、エアコンメーカーは代替に向かわざるを得ない。溝つき銅管の外側がアルミパイプのものも出てくるだろう。新しい製造技術によって銅メッキアルミ管、アルミメッキの銅も出てこよう。既に大手エアコンメーカーは新素材のエアコンを作り始めている。関係団体など組織のサポートが必要であり、業界でも更に銅管のメリットをアピールすべき。」旨の代替化に対する深刻な危機感を訴えました。

 「上海先物市場での銅取引の機能」と題した講演では、上海先物取引所の副会長が、「中国の先物市場は拡大中。上海先物取引所は6つの取引所を統合したものであり、鉱工業製品の取引を所管。2009年上海先物市場は世界第三位となり、銅に関しては安定している。銅価格の上下変動の可能性が大きいことから、より多くの企業が先物市場に参加。鉄・ゴム・亜鉛に比べると銅の参加企業は多い。1992年開始当初は価格への影響力は小さく、LMEが力を持っていたが、2002年以降状況が変化し、上海のウエイトが高まってきている。商品品質についても、LMEのブランディング並みの登録を上海は行っている。現在27ブランドが登録されており(国内生産量の85%以上)、ほとんどの製錬会社が関与している。今後、更に登録は増えると思われる。」旨を講演。

 「Tongling(銅陵市):往古中国の青銅中心都市であり、現在は近代的銅産業の街」と題する講演では、銅陵市長が市における銅産業の位置づけを紹介。「銅陵市は安徽省の中央部、人口7万人。銅の街であり、三千年の歴史がある。南京までは車で1時間半。150の国々と貿易をしており、300の外資系企業がある。銅は鉱山、製錬、加工と主要産業が揃っており、40万トンのスクラップを処理する施設もある。生産は、銅棒35万トン、銅線150km、銅合金板条12万トン。リードフレームも製造。現在、4.8万トンの銅管工場を建設中。国立研究機関(銅・鉛・亜鉛)の完成を控えている。中国で最も大きい製錬場を作る計画であり、外国からの投資も期待している。」旨を講演。

 「中国経済予測分析」と題する講演では、中国統計局将来予測庁副局長が、「中国の景気は期待通りには回復していない。ビジネスの自信が低下しているが、農村部の収入は上がっている。つまり、中国全体で給与所得の調整がなされている。中国指導部は農民への社会保障を重視しており、農村部の都市化も進んでいる。 業種別に見ると、飲料、医薬品など専売的又は軽工業は楽観的だが、重工業はそうではない。2010年上期は内陸(中央、西部)が急成長している。雇用の成長率も中央部に移行しつつある。産業自体が地方にリロケーションしている。7兆円の刺激策により、ここ数ヶ月間の間に自動車、家電、家具が成長して、家を買う人が増えたが、不動産のコントロールを行った結果、消費の冷え込みがみられた。農村部では北京に10年遅れて所得が上昇してきた。自動車への購入意欲が高まっており、また購入できるようになってきた。現在中国経済は新しい段階に入ってきており、貿易収支面では輸入が輸出を上回った。つまり中国経済は原料輸入への依存が高まっており、もし経済への打撃があれば、中国の輸出、成長もダウンする。米・欧・日の失業率の増大が消費を下げ、保護主義の台頭が顕著になっている。西欧諸国の赤字財政を見るとそろそろ警戒レベルにあると思われる。投資が緩やか、輸出が下降、消費は安定化しているが、中国の経済は今バランスが取れていない。若干のスローダウンをしても薬を飲み続けなければならない。」旨をコメントしました。

 なお、総会翌日は、参加者が2グルーに分かれ、上海市の金龍精密銅管工場視察(約20名)及び銅陵市の銅関連産業視察(約40名)を行いました。私は後者に参加し、銅陵市の鉱山、製錬所、板条工場、電線工場、電解箔工場を視察しましたが、前日の市長の講演どおり、採鉱から販売までの銅産業チェインが形成されているとともに、市内の随所でビル建築が進められており、地方都市における経済発展のダイナミズムとスピード感というものを実感しました。なお、銅陵市までは、上海〜南京間を日本から導入された新幹線(和階号)で2時間、南京〜銅陵市間はバスで1時間半を要します。

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