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♀マークについて


 新年、明けましておめでとうございます。
 昨年の伸銅業界は、国内外の厳しい経済環境の影響を大きく被り、伸銅品の生産量も約77万トンと3年振りの80万トン割れとなるなど、非常に厳しい試練の年でした。
 今年は巳年。「巳」の意味を調べますと、「漢書律暦志」によれば、「草木の成長が極限に達して次の生命が作られ始める状態」とされています。新政権による新成長戦略の下で蒔かれた施策の種が萌芽し、やがて日本経済の再生に向けて結実するよう、文字通り脱皮の年となるよう期待したいものです。
 さて、今回は♀マークについての話です。
 ♀マークは、一般的には雌記号として知られていますが、この記号は世界的にも銅のシンボルマークとしても使われていることは、関係者以外には余り知られていないと思います。私が兼務する日本銅センターや銅業界発展のための活動をしている米国のカッパークラブ(本部:ニューヨーク)等もシンボルマークとして♀を使用していますが、しばしば、♀マークの銅と雌記号との関係を尋ねられることがありますので、ここに書き留めておくのも意義あることと考え、参考資料を寄せ集め、にわか勉強で編集してみました。

 
日本銅センターのマーク    米カッパークラブのバッジ
 ♀は、15世紀頃の占星術に由来する惑星記号の中では金星を表しています。占星術では、この金星を司る神がローマ神話における美と愛の女神ヴィーナスであり、♀はヴィーナスの持つ手鏡を図案化したものといわれています。金星の英語名がVenusというのも頷けます。
 また、占星術では惑星を象徴する金属として、金星を銅になぞらえています。これが♀が銅のシンボルマークとされている所以だと思います。ちなみに、占星術の惑星と他の金属の関係は、月=銀、火星=鉄、水星=水銀、木星=鉄、土星=鉛、太陽=金です。(天動説時代なので、地球は惑星とはみなされていません)
 また、惑星記号では火星は♂(盾と槍を図案化したもの)で表されますが、この火星を 司る神がローマ神話で軍神と崇められるマールスです。火星の英語名Marsの語源です。
 ヴィーナスが愛・女性を、マールスが武勇・男性の象徴とされていたことから、 これが性別記号の雌「♀」、雄「♂」の由来であり、この性別記号を定義したのは、 生物学者のカール・フォン・リンネ(スェーデン.18世紀)であるといわれていま す。
 なお、♀マークの起源については、更に古代エジプト時代にまで遡る説があります。
 古代エジプト人は、象徴図像である「ankh」(アンク)記号を生命の象徴として使用して いました。アンクは、エジプト十字架ともいわれ、十字形の上の部分が丸い形をしているもので、エジプトの神々が手にこのシンボルを持っている姿が多くの壁画などに描かれて います。
              大英博物館に展示されているアンク形の        女神からアンクを授かるアメンヘテプ     アミュレット(お守り)(BC500年頃)           2世の壁画(BC 15世紀)          (筆者撮影)                            
 古代エジプトの王族の永遠の生命への願いが強かったことは、ミイラやピラミッドを通 してよく知られていますが、王族の名前の一部にもこの「ankh」が付けられていました。
 現在、上野の森美術館でツタンカーメン展が開催されていますが、この若き王ツタンカ ーメン(BC1300年頃)の名前も分解すると「Tut・ankh・amen」(トゥト・アンク・アメン)となり、その妻アンケセナーメンも分解すると「Ankh・esen・amen」(アンク・エセン・アメン)となります。
 また、アンクマークは、古代エジプトの神々の中でも最も崇拝されている豊穣と母性の 女神イシスのシンボルマークであったともいわれています。
                  女神イシスの壁画(BC 1360年頃)        女神イシスからアンク(永遠の命)を          (出典:wikipedia)                授かる古代エジプト女王ネファタリ                                                         
                            (出典:日本銅センター「銅」誌)
       
 なお、先述の米国カッパークラブは、銅の需要促進に功績のあった者を毎年1~2名選んで表彰を行っていますが、その賞の名もアンク賞と呼ばれています。ちなみに2011年は住友電気工業鰍フ松本正義社長が受賞されました。
 最後に、イタリアの大手伸銅メーカーKME社のホームページに掲載されている興味深いレポートをご紹介します。
 "古代ローマ時代、銅の主要生産地はキプロス(Cyprus)島で、銅は「Cuprum」 と呼ばれていました。これが英語の「copper」の語源です。一方、銅は「アンク」 とも呼ばれました。それは、古代エジプトの「Ankh」、つまり♀が永遠不滅の生 命を現す印で、銅がリサイクルされ何度も再生されるものであることから、その イメージが重ね合わせられたからであるといわれています。"

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